【グジャラート建築案内】1.ル・コルビュジエ (4)サンスカル・ケンドラ ’Sanskar Kendra’
サンスカル・ケンドラ美術館(写真12)は 当時のアーメダバード市長の依頼により、知識を統合する施設の一つとして建設された。
サンスカル・ケンドラの原型はポール・オトレ(図書館の書籍分類方 法、国際十進分類法の発明に寄与した)の発案の全ての知識を収蔵する事を目的としたムンダネウム計画に参加したル・コルビュジエが提案した無限発展美術館である。
ムンダネウムは実現する事がなかったが、ル・コルビュジエの無限発展美術館をプロトタイプとした美術館は、インドのアーメダバード、チャンディ ガール、そして日本の国立西洋美術館(2016年に世界遺産に登録)として実現した。アーメダバードの無限発展美術館はサンスカル・ケンドラと呼ばれ、実現した3つの美術館の中で最初に竣工をした(計画自体はチャンディガール美術館の方が早い)。
ル・コルビュジエはただの美術館ではなく、ムンダネウムのような美術や 考古学、工業、商業といった知識の網羅する計画をクライアントに提案したが、財政難を理由に美術館のみが完成した。
敷地はサバルマティ川の川辺にあり、道路を挟んだ反対側には国立デザイン研究所(NID)がある。ル・コルビュジエは美術館を一辺50mの正方形の形をし、無限発展美術館のプロトタイプとし将来的な増築を想定したスヴァスティカと呼ばれる風車のような腕の様な別館を建てる事を計画していたが、実際には中央棟のみが建設された。
建築的な特徴としては、一階部分をピロティ(写真13)とし、中央部には14mx14mの中庭がある。そして中庭にあるスロープ(写真14)を通じて2階 のエントランスへいたる。この特徴は、繊維工業会館にもみられ、ル・コルビュエのアーメダバードでの拘りの一つだといえる(実際の問題としてサバルマティ 川の氾濫を想定し一階には重要な施設を設ける事が出来なかった)。
またインドの気候に対応すべく、竣工当時は屋上庭園があり、45個の池がつくられていた。また外周部のコンクリートの雨樋(写真15)に みえる部分は、壁面緑化用プランターである。
このサンスカル・ケンドラ以降に完成したチャンディガール美術館と西洋美術館との違いにはトップライト扱い方がある。
サンスカル・ケンドラでは壁の上部につけられたハイサイドライトが主要な開口部であるが、チャンディガール及び西洋美術館では、天井部分を突起さ せハイサイドライトをつけ、部屋の真上から光が落ちる様に設計されている。
竣工直後の1950年代、1960年代にはアメリカのニューヨーク近代美術館(MOMA)の世界巡回展などがサンスカル・ケンドラで模様され当時のインドの文化に影響を与えていたと考えられる。
現在、一階部分には日本人が設立に関わった凧美術館(写真16)があり、二階部分には1990年代の改装時に寄贈されたアーメダバードゆかりの美術品が展示されている。残念ながら、アーメダバードにある4つのル・コルビュジエの建物の中で最も保存状態が悪いが、この建築に込められた壮大な構想と、日本の国立西洋美術館との関連を知れば、より深くサンスカル・ケンドラの価値が理解できる様に思われる。
住所:Sanskar Kendra, opp. Tagore Hall, near NID, Sardar bridge corner, Paldi, Ahmedabad, Gujarat, India
電話番号:不明
見学時間:月曜日を除く10:30-16:30
見学方法:2階の受付で記帳をする。館内での撮影は禁止。
参考文献:
Le Corbusier Oeuvre complete, Le Corbusier, LEAZ, 1953-1970
ル・コルビュジエのインド、彰国社編、2005年、彰国社出版
ル・コルビュジエ プランズ vol.10, ル・コルビュジエ財団及びEchelle-1編、2006年、コーデックスイメージズ
所在地:
Architecture in Ahmedabad(ル・コルビュジエを含む近代建築と遺跡のマップ)
(寄稿者:飯田寿一)